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損害賠償条項における留意点(その2)



 前回
からの続きです。


 また、損害賠償の対象範囲の話の中で、「相当因果関係」という言葉を耳にすることがあります。  


 これは、原因となったある行為がなければ、問題となっている結果もなかったという「因果関係」が、通常予見できる範囲(相当)であると考えるものです。  




 しかし、実際の裁判になるとそれぞれのケースでの解釈が複雑になりますので、弁護士の力が必要になります。こうやって意味を理解しながら読むと楽しくありませんか?  



 また、損害賠償請求額の上限を設けるか設けないかの条項の中で、「故意または重大な過失」の場合には上限を適用しないという言葉を見かけることが多いと思います。  


 ところで「重大な」とは誰がどのように判断するのか考えてみたことがありますか?  


 原告と被告では「重大」の理解が異なることがあり得ますし、どのような事業者のレベルをもって重大性や過失を判断するかも違いますよね。      




 さて、損害賠償に関する条項では、上に書いたような損害賠償請求額の上限の話が出て来ます。


 もし、上限に関する記述がなければ、その通り上限の設定がないのですが、IT契約では殆どの場合この上限を設定しています。  



 「モデル取引・契約書」にも上限設定の条項の例が記載されており、説明文には「ユーザ・ベンダで対立するところではあるが」「個別に決定できる」と書かれています。  



 しかし、「モデル取引・契約書」の条項例に上限の記述があるため、上限を設けることが推奨されていると勘違いしてしまいます。      


 ですから私は、「モデル取引・契約書」の条項例に上限を入れず(上限に関する記載をせず)、補足説明で「上限を設ける必要がある場合には」として、上限を設けた条項の例を示すべきであると思います。  



 私が前に「モデル取引・契約書」は6:4でベンダーに有利であると思うと書きましたが、こんなところにもその理由があります。      


 私は以前、こうした上限を設けようとする理由は、中堅中小のベンダーが大きな事故を起こしてしまった場合に、その企業が倒産の危機にさらされるので、それを保護するためと聞いたことがあります。  



 ここでいう上限を設けないというは、全くの無制限という意味ではなく、裁判官が過去の判例等から世間的に妥当と考えられる金額に収めます。  


 日本を代表するような大手ベンダーに対して損害賠償請求額の上限を設ける必要があるでしょうか。    



 ある製造業が事故を起こしてしまった場合、損害賠償請求額の上限がありますか?  


 例えば自動車の設計や製造工程での問題で死亡事故が起きてしまった場合に、損害賠償の上限がその車1台分の購入代金と言っているようなものではないでしょうか。  

 IT契約では上限を設けない方が、ベンダー内での緊張感が高まり、品質管理のレベルが現状よりも高くなるのではないでしょうか。私はそう思っていますし、そうして欲しいと願っています。  


<次回に続く>    



 

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